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名義財産と生前贈与加算|相続税対策で注意すべきポイントを解説

相続税の負担を軽減する方法にもいろんな手段がありますが、まだ相続が始まっていない(亡くなっていない)のであれば生前贈与を検討しましょう。

 

生前贈与をすれば相続財産を減らすことができますので、相続税の節税に効果的です。ただし注意点もあります。

特に①名義財産と②生前贈与加算には気をつける必要がありますので、当記事ではこの 2点を特に解説していきます。

相続税対策には生前贈与が有効

相続税の大きさは、相続開始に伴って移転する財産の大きさと比例関係にあります。単純に比例するわけではありませんが、「遺産の総額が大きいと相続税の負担も大きい」「遺産の総額が小さいと相続税の負担も小さい」という傾向にあります。

 

そのため相続税対策の基本は「遺産を減らすこと」にあり、相続が始まる前に特定の人物へ贈与をしておくことが有効といえます。

 

このときの贈与は特に「生前贈与」と呼ばれます。

「名義財産」には注意

贈与を行えば、贈与財産の所有者が変わります。被相続人となる人物ではなく受贈者が所有者になり、当該財産も遺産には該当しなくなります。

 

ただし、その財産が「名義財産」と評価されてしまうと、一応は被相続人以外が所有していることになっているものでも、相続税の計算上は遺産に含まれてしまいます。

 

名義財産とは、「名義だけが別の人物になっているものの、実質的な所有者は被相続人である財産」のことです。

被相続人の財産であるということは遺産を構成する財産の 1つとなり、相続税の課税を受けることを意味します。

「生前贈与加算」にも注意

名義財産ではなく、実質面において受贈者の財産として扱われている財産であっても、「生前贈与加算」のルールには留意すべきです。

 

これは相続税法に規定されている計算上のルールで、「生前に被相続人から贈与されていた財産でも、相続開始前の一定期間内に贈与がされているときは、相続財産としてその価額を加算する」という制度です。

 

「相続直前の贈与は遺産の前渡しである」との解釈に基づき、生前贈与加算のルールは運用されています。

名義預金について

相続税申告の場面では「名義預金」がよく問題となります。

名義預金は「家族など被相続人以外の名義になっている預金口座」のことで、実情を知らない相続人らからすると被相続人の財産ではないように見えます。そのため申告から漏れてしまうことがあるのです。

 

しかし重要なのは「管理を実際に行っていた人物が誰なのか」ということです。

被相続人が当該口座を実質的に管理していたのならそれは名義預金として相続財産の一部に含めないといけません。

 

この判断において重要になるポイントが次の 3点です。

 

  1. 預金の資金源はどこから来ていたのか
  2. 預金の管理や運用は誰が行っていたのか
  3. 名義人になっている方が贈与を受けたことについて認識を持っているか

 

それぞれ詳しく説明していきます。

判断ポイント①資金源

名義預金かどうかの判断をする上では「預金口座に入っているお金がどこから来たのか」が見られます。

 

資金源が被相続人であったのなら、「被相続人のお金を他人名義の口座に入れただけ」という評価を受けることで、名義預金と評価される可能性が高くなってしまいます。重要なのは名義などの形式的な部分ではなく、実質的な部分です。

 

そこで名義は被相続人の子どもになっていても、その名義人である子ども自身が自らのお金を口座に入れたのではなく、被相続人である親が生前にお金を入れていたのであれば「資金源は被相続人であった」ということができます。

 

とはいえ預金口座に入っているお金がそれ以前には誰のものであったのか、その判断をするのは簡単ではありません。そのため推察にあたり①口座開設手続を行ったのは名義人か、②名義人は預金をするだけの収入・経済力があったか、の 2点がチェックされることになるでしょう。

 

口座開設手続を名義人自身が行い、名義人の経済力からして預金の大きさも自然であるといえるのなら、「資金源は名義人である」と評価できます。
もちろん、他の要素も総合的に考慮する必要があります。この 2点だけで明確に資金源の線引きができるわけではありませんので留意してください。

判断ポイント②管理・運用をしていた人物

預金の管理や運用を誰が行っていたのか、こちらも名義預金かどうかを見分ける重要な判断ポイントです。

 

具体的には「通帳や印鑑、カードなどを誰が所持していたのか」がチェックされます。

 

名義人が口座に関する書類やカードなどを持っておらず、管理・運用することが現実的に難しい状況にあったのなら、被相続人が管理していた財産として名義預金との評価を受けやすくなります。

 

例えば贈与の手続を経て財産を子どもや孫などに与えていたとしても、散財を防ぐために贈与者である被相続人自身が通帳や印鑑を所持し、これらを渡していなかったのであれば、名義預金として扱われる可能性が高いです。

判断ポイント③名義人の認識

名義預金の疑いがかかっている口座、その預金に関して、名義人が認識できていることも重要な判断ポイントです。

 

自らの財産であれば預金の存在を認識できているものと考えられます。一方で名義だけが与えられていた場合にはその存在を認識できておらず、どこに・いくらの預金が入っているのかを知らないという状況になりやすいです。

 

贈与契約書を作成して形式上は贈与財産であったとしても、それだけで名義預金であることの証明とすることはできませんので注意しましょう。

生前贈与加算の期間について

すべての贈与財産に対して生前贈与加算が適用されるわけではありません。

贈与税の特例を受けて贈与された場合など、いくつか加算の対象から外れるケースがあります。

 

また、贈与が実行された時期がとても大事です。

 

このルールが適用される期間は「相続開始前 7年以内」であり、この期間より過去に行われた贈与であれば相続税の計算に含める必要はありません。

 

この 7年という期間は 202411日から運用が始まっており、それ以前は「相続開始前 3年以内」が適用期間でした。新ルールに基づく期間が適用されるのは改正法が施行された 2024年以降ですので、相続が始まる 4年前に行われた贈与でも 2023年に実行された分については対象外です。

 

この関係を簡易的にまとめたのが下表です。

 

相続年\贈与年

2022年

2023年

2024年

2025年

2025年

加算対象

加算対象

加算対象

加算対象

2026年

加算対象

加算対象

加算対象

2027年

加算対象

加算対象

2028年

加算対象

加算対象

2029年

加算対象

加算対象

2030年

加算対象

加算対象

2031年

加算対象

2032年

2022年、 2023年の贈与には新ルールの適用なし。

前4 ~7年の贈与分からは100万円を控除

2024年以降に適用された新ルールでは、相続開始前 4年~ 7年にあたる期間が伸長されています。
ただ、この期間に関してはそのまま贈与価額を遺産に加算するのではなく「 100万円の控除」が利用できることとなっています。

 

そこで生前贈与加算をする価額については次のように計算できます。

 

 

例1)毎年 10万円の贈与を繰り返していた場合

 

生前贈与加算の価額 =  13年前分の贈与価額+ 47年前分の贈与価額

          =  30万円+ 0

          =  30万円

 

  • 13年前分の贈与価額 =  10万円+ 10万円+ 10万円 =  30万円
  • 47年前分の贈与価額 =  10万円+ 10万円+ 10万円+ 10万円 =  40万円
    47年前分の 40万円からは最大 100万円を控除できる。

 

 

例2)毎年 100万円の贈与を繰り返していた場合

 

生前贈与加算の価額 =  13年前分の贈与価額+ 47年前分の贈与価額

          =  300万円+ 300万円

          =  600万円

 

  • 13年前分の贈与価額 =  100万円+ 100万円+ 100万円 =  300万円
  • 47年前分の贈与価額 =  100万円+ 100万円+ 100万円+ 100万円 =  400万円
    47年前分の 400万円からは最大額の 100万円を控除。

 

 

生前贈与加算が適用される財産かどうかの判定、加算額の計算などは税理士に対応を任せるようにしましょう。

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代表者の紹介

美藤直人税理士

公認会計士
税 理 士
美藤 直人

BITO Naohito

皆さまの『良き経営アドバイザー(軍師)』を目指して

ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
公認会計士・税理士の美藤直人(びとうなおひと)と申します。
私は1991年に公認会計士試験(旧第2次試験)に合格後、大手監査法人に勤務していましたが、2011年に税理士登録して当事務所を設立し、企業・個人事業者であるお客さまに対してご事業の発展をサポートするアドバイザー‘軍師’であり続けたいと考えて業務を行ってきました。

日本はバブル経済の崩壊後、厳しい経営環境にありますが、このような状況下において、経営者の皆様のご事業のサポートをするのが、私の真の仕事であると考えています。
また、『史記』(中国前漢の武帝の時代の歴史書)に「計は会なり」という言葉が初めて表れたのが「会計」という言葉の始まりだと言われています。この「計は会なり」は「各方面の現場の真実を正しく報告すれば、ビジネスの価値が増大する」という意味であり、私が公認会計士・税理士として「会計」のお手伝いをすることが、お客さまのご事業の発展に通じることになります。

したがって、お客さまのご事業が発展し、私も成長できたと認識できたときは、心の底から喜びを感じる次第です。 もちろん、企業・個人事業者及び個人の納税者であるお客様には、法令のルールに即した節税のアドバイスもさせていただきます。
今までの実務経験を活かしながら、「お客さまとともに成長する」ことを大切にし、起業支援、個人事業者の法人成り、創業融資、補助金の申請、税務申告(法人税、所得税、消費税、相続税など)、事業承継、事業再生、事業計画の作成支援、M&Aの買収調査まで幅広くお手伝いをしています。
お気軽にご相談ください。

経歴

  • 1968年 8月
    大阪府豊中市生まれ
  • 1987年 3月
    大阪府立豊中高等学校 卒業
  • 1991年10月
    公認会計士第2次試験に合格 会計士補登録
  • 1992年 3月
    同志社大学経済学部 卒業
  • 1992年 4月
    監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)に入社
  • 1995年 3月
    公認会計士第3次試験に合格 公認会計士登録(登録番号12473)
  • 1998年 2月
    Deloitte & Toucheアナーバー事務所(米国ミシガン州)に2ヵ月間の短期派遣
  • 1999年 1月
    監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)のコンサルティング部門を兼務
  • 2001年 4月
    監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)のベンチャーサポート部門を兼務
  • 2005年10月
    金融庁に一般職の任期付常勤職員として勤務
  • 2007年10月
    監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)に復職
  • 2011年 9月
    有限責任監査法人トーマツを退職
  • 2011年10月
    美藤公認会計士事務所を開設
  • 2011年12月
    税理士登録(登録番号120080)、美藤税理士事務所を開設
  • 2012年 7月
    株式会社コンステックホールディングス社外取締役に就任(2019年7月まで)
  • 2013年 7月
    中小企業経営力強化支援法(現在の「中小企業等経営強化法」)に基づく経営革新等支援機関に認定
  • 2013年12月
    大阪府中小企業再生支援協議会(現 大阪府中小企業活性化協議会) 外部専門家に登録
  • 2015年 6月
    サンセイ株式会社(東証2部、現スタンダード)社外取締役に就任(現任)
  • 2018年 1月
    監査法人ラットランド社員(パートナー)に就任(現任)
  • 2019年 7月
    株式会社コンステックホールディングス非常勤監査役に就任(現任)

セミナー講師等の実績

  • 近畿財務局主催:コロナ禍における企業支援の在り方・手法ゼミ(2021年10月、11月、2022年10月、11月)
  • 日本弁理士会関西会、日本公認会計士協会近畿会、大阪弁護士会共催:大学生応援セミナー ~弁理士、公認会計士、弁護士による職業紹介~(2021年2月)
  • 大阪信用保証協会主催:事業承継セミナー ~経営者から見た会計の重要性(企業会計 税務会計 管理会計)~(2017年10月)
  • 一般社団法人大阪銀行協会主催:事業承継セミナー ~事業承継のためのM&A、従業員持株会及び種類株式の有効活用~(2017年9月)
  • 大阪大学基礎工学研究科主催:科学者のための財務、法務、知財の基礎 ~実務家の視点から~(2016年7月)
  • 関西大学社会連携部知財センター主催:弁護士・公認会計士・弁理士による実務家講座(2015年11月、2016年11月)
  • 日本公認会計士協会近畿会、大阪府不動産鑑定士協会共催:企業評価と事業用不動産の鑑定評価(2015年7月)
  • 日本公認会計士協会近畿会、大阪弁護士会、日本弁理士会近畿支部共催:公認会計士の業務及びベンチャー支援(2014年1月、9月)
  • 一般事業会社の社内研修:消費税と適格請求書等保存方式~インボイス制度~(2023年7月)、経営戦略、中期経営計画、取締役の義務と責任、決算書の見方(2013年2月、2019年7月)、国際財務報告基準(IFRS)(2010年)
  • 八日市商工会議所主催:若手経営者のための決算書の見方、財務分析及び資金調達(2012年10月)
  • 大阪証券取引所主催:ヘラクレスクラブ勉強会 ~内部管理制度・内部監査~(2003年7月)
  • その他:株式上場セミナー(2003年9月、2004年2月、2004年8月、2005年1月)、IPOの成功例と失敗例(2003年4月)、ビジネスプランの作り方(2001年9月、2002年2月)、ディスクロージャー実務者養成セミナー(2003年9月)、ビジネスプラン作成講座(2001年7月)など

事務所概要Office Overview

名称 美藤公認会計士・税理士事務所
所在地 〒530-0041 大阪市北区天神橋2丁目北1番21号 八千代ビル東館3階B号室
大阪メトロ南森町駅・JR大阪天満宮駅の3番出口を出て天神橋筋商店街を北に120m
1つ目の小さな十字路を右折して40m先の右側のビル(1階に皮膚科と調剤薬局があります)
TEL TEL:06-4800-8410
代表者 美藤 直人(びとう なおひと)
対応時間 平日 9:00~18:00
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