暦年贈与を検討したときに早期で行うべき理由
有効な相続税対策として暦年贈与が挙げられます。
しかし、暦年贈与はやり方を間違えると、税務署から指摘を受け、結果的に節税に繋がらないこともあります。
本記事では、暦年贈与とはどのようなものなのか、また早期に行うべき理由などについて解説していきます。
暦年贈与とは
暦年贈与とは、贈与税の基礎控除額の範囲内で、贈与する節税方法のことをいいます。
贈与税は超過累進課税制度が採用されており、贈与額が大きいほど高くなります。
一度にまとまった資金を移転した場合、最大で55パーセントの税率がかかることもあるのです。
暦年贈与は年間の基礎控除額である110万円以内の贈与を繰り返し行うことで、相対的に支払う贈与税や相続税を抑えられる効果が狙えます。
これは暦年贈与を利用する大きなメリットといえるでしょう。
なお、贈与税は贈与者が支払うものではなく、財産を受取る受贈者ごとに適用されるため、受贈者が多くいるほど節税効果が見込めます。
暦年贈与を早めに始めるべき理由
暦年贈与を早く始めるべき最も大きな理由は、近年特に注目されている「相続開始前7年以内の贈与は相続財産に持ち戻される」というルールがあるためです。
これは相続税の計算上、贈与者が亡くなる直前に行われた贈与はなかったものとみなされ、相続財産に持ち戻しされる制度です。
贈与を早期に始めることで、より多くの贈与をこの持ち戻し期間外とすることができ、相続税の節税に繋がります。
例えば、20年かけて贈与する計画であれば、最初の13年分の贈与は持ち戻しの対象外となります。
暦年贈与でも相続税がかかるケース
暦年贈与を行っていても、形式的な要件を満たしていない場合や、実態が伴わない場合、税務署によってその贈与自体が無効と判断されてしまうケースがあります。
その結果、贈与財産が相続財産として認定され、相続税が課税されてしまうことがあります。
以下で相続財産とみなされる可能性のあるケースを見ていきましょう。
名義預金とみなされた場合
「名義預金」とは、口座名義人(受贈者)とは別の人が資金を拠出し、その資金を実質的に管理している預金口座のことです。
例えば、親が子の名義で勝手に口座を開設し、親自身がその通帳や印鑑を管理しているケースがこれに該当します。
この場合、税務署は受贈者に財産を受取る認識や意思、そして自由な処分権がなかったと判断し、その預金全額を贈与者(親)の相続財産として認定され、相続税の課税対象になる可能性があります。
定期贈与とみなされた場合
「定期贈与」とは、当初から「毎年110万円を10年間にわたって贈与する」というように、総額と期間を定めて行われた贈与のことです。
この場合、税務署は贈与した総額に対し、贈与税をかけることになります。
その結果、多額の贈与税が課税される可能性があります。
持ち戻しにより相続財産とみなされた場合
持ち戻しとは、相続税の課税計算を行う際、被相続人が亡くなる前の一定期間内に行った贈与財産を相続財産に加算し直す制度です。
この制度は現在、持ち戻しの対象となる期間が段階的に延長されており、2031年以降、過去7年間に行われた贈与がその対象となります。
つまり、仮に暦年贈与を行なっていたとしても、相続が発生した時点から最長過去7年分は相続税の課税対象になる可能性があります。
暦年贈与を行うときに意識すべきこと
暦年贈与を検討する場合、追加で課税されないようにするためには行うべきこととして次のようなものが考えられます。
- 贈与契約書を残しておくこと
- 日付や金額が一定にならないようにする
それぞれ確認していきましょう。
贈与契約書を残しておくこと
暦年贈与を有効なものとして成立させるためには、贈与者と受贈者の間で財産を贈与する、受取るという双方の合意があったという証拠が必要です。
この証拠として最も有効なのが、毎年作成し、両者が署名・押印した贈与契約書です。
贈与契約書には、贈与した日付、金額、贈与者と受贈者の氏名を明記します。
これにより、贈与の都度、双方の贈与の意思があったことを客観的に証明できます。
日付や金額が一定にならないようにする
定期贈与とみなされるリスクを避けるために、毎年同じ時期に同じ金額を贈与することは避けるべきです。
贈与の時期を年の途中にずらしたり、金額を105万円や108万円などと変えたりすることで、「その年ごとの新たな贈与」であったことを示し、定期贈与とみなされるリスクを軽減できます。
贈与税を払った方が良い場合もある
暦年贈与において、110万円を超えてもあえて贈与税を支払う戦略が有効な場合も存在します。
例えば、110万円を超えた額の贈与を行い、税率の低い範囲内で申告・納税を行うことで、税務署に定期贈与とみなされるリスクを低減できるといったメリットがあります。
また、支払った贈与税額は持ち戻し期間内の贈与であっても相続税額から控除されるため無駄になりません。
ただし、節税のために金銭を贈りすぎ、贈与者自身の将来の資金繰りが困窮するリスクも考慮する必要があります。
追加課税のリスク回避と資金繰りの両面から、贈与の方法については税理士に相談し、綿密な計画を練ることが重要です。
まとめ
暦年贈与は開始が早ければ早いほど、非課税枠の利用回数を増やし、持ち戻しの対象外となる財産を増やすことができます。
しかし、暦年贈与を成功させるためには、贈与契約書を作成すること、金額や日付を毎年変えることで定期贈与とみなされないようにすること、そして受贈者が財産を自由に管理・使用することといった、形式と実態の両面での適切な手続きが不可欠です。
暦年贈与に関して困ったことがあれば、税理士にご相談ください。
KNOWLEDGE基礎知識とキーワード
相続対策に関する記事
認定経営革新等支援機関に関する記事
キーワード
PROFILE代表者の紹介

美藤 直人(びとう なおひと) / 公認会計士・税理士
大手監査法人での豊富な実務経験と、企業支援・相続・事業承継まで幅広い支援実績を持つ公認会計士・税理士です。
金融庁勤務や上場企業の社外役員など、多角的な視点で経営をサポートしています。
皆さまの『良き経営アドバイザー(軍師)』を目指して
ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
公認会計士・税理士の美藤直人(びとうなおひと)と申します。
私は1991年に公認会計士試験(旧第2次試験)に合格後、大手監査法人に勤務していましたが、2011年に税理士登録して当事務所を設立し、企業・個人事業者であるお客さまに対してご事業の発展をサポートするアドバイザー‘軍師’であり続けたいと考えて業務を行ってきました。
物価や金利の変動など経済環境が大きく変化する今、経営にはこれまで以上に柔軟な判断と確かな戦略が求められています。公認会計士・税理士として、経営者の皆さまの意思決定を支え、安心して事業を発展させていけるように全力でサポートすることが、私の真の仕事であると考えています。また、『史記』(中国前漢の武帝の時代の歴史書)に「計は会なり」という言葉が初めて表れたのが「会計」という言葉の始まりだと言われています。この「計は会なり」は「各方面の現場の真実を正しく報告すれば、ビジネスの価値が増大する」という意味であり、私が公認会計士・税理士として「会計」のお手伝いをすることが、お客さまのご事業の発展に通じることになります。
お客様の発展を自分の喜びとし、信頼される‘軍師’として法令に基づいた節税と経営サポートを行ってまいります。
今までの実務経験を活かしながら、「お客さまとともに成長する」ことを大切にし、起業支援、個人事業者の法人成り、創業融資、補助金の申請、税務申告(法人税、所得税、消費税、相続税など)、事業承継、事業再生、事業計画の作成支援、M&Aの買収調査まで幅広くお手伝いをしています。
お気軽にご相談ください。

OFFICE事務所概要
| 名称 | 美藤公認会計士・税理士事務所 |
|---|---|
| 事務所所在地 | 〒530-0041 大阪市北区天神橋2丁目北1番21号 八千代ビル東館3階B号室 |
| 連絡先 | TEL:06-4800-8410 |
| 代表者 | 美藤 直人(びとう なおひと) |
| 対応時間 | 平日 9:00~18:00 |
| 定休日 | 土曜・日曜・祝日※事前にご連絡いただければ、休日も対応します。 |

アクセス
大阪メトロ南森町駅・JR大阪天満宮駅の3番出口を出て天神橋筋商店街を北に120m
1つ目の小さな十字路を右折して40m先の右側のビル(1階に皮膚科と調剤薬局があります)