相続税が課税される財産・課税されない財産まとめ
亡くなった方の残した財産には基本的に相続税がかかります。しかし、その価額のすべてに相続税がかかるものばかりではありませんし、相続税がかからないケースもあります。その判断に迷うこともあるかと思いますが、ここに相続税が課税される財産・課税されない財産をまとめましたので、ご参考にしていただければと思います。
土地について
土地は相続税を計算するうえで特に重要な財産といえます。価値の評価が難しいことに加え、課税価格が大きくなりやすいためです。
そこで、亡くなった方が土地を遺していたときは注意してください。
なお、課税対象となる土地は自宅の敷地だけではありません。次の土地にも原則として課税されます。
マンションの敷地 | 分譲マンションを所有している場合、専有部分の建物だけでなく、敷地権も持つことに留意。マンションが建っている敷地全体から、マンション1室に対応する敷地権を評価して相続税を計算する。 |
|---|---|
貸宅地 | 借地権の目的になっている土地が「貸宅地」です。被相続人が土地の貸主であった場合、その土地に本人が住んでいなくても、貸宅地として相続税の課税対象となる。 |
借地権 | 地代を支払い、建物を建てるために土地を借りる権利を「借地権」という。被相続人が土地の借主であった場合、この権利も計算に含める。 |
駐車場 | 駐車場として使っている土地も相続税の課税対象です。状況が近い近隣の土地の価額をもとに評価し、相続税の計算に含める。 |
私道 | 個人所有の私道が不特定多数の通行に使われているときは0円で評価するが、所有者だけが使っているときは通常通りに評価する。所有者以外も通行しているが特定の人物のみであるときは、通常の評価額の30%で評価し、相続税の計算に含める。 |
先代名義のまま放置されている土地があるときも注意してください。
遺言書がなく、遺産分割協議も行われていないときは、そのうちの一部を相続財産として含める必要があります。
家屋について
次の家屋は相続税の課税対象です。
- 戸建の建物
- マンションの部屋
- 貸家(貸アパートや貸マンションも同様)
- 門や塀
- 建築中の建物
一方で、「借家」「家屋と構造上一体の設備」は別途計算する必要がありません。
被相続人が借家で住んでいても、原則として借家権に相続税はかからないためです。また、ガス設備や電気設備など、家屋に取り付けられて構造上一体になっているものも家屋としての評価に含まれるため、相続税に関して別途評価を行う必要がないのです。
「庭」も基本的には考慮しなくてかまいません。ただし、庭石や庭木、池などがあって、庭園と呼べるようなレベルだと相続税の対象となります。
現金預金について
現金や預金なども相続税の対象です。
- 普通預金
- 定期預金
- 通常貯金
- 定額貯金
- 外貨預金
もし、被相続人の自宅から、被相続人の家族名義の通帳が見つかったときは要注意です。
第三者の名義で口座が作られていても、実質被相続人が管理して入金なども行っていたのであれば、実質的な所有者は被相続人です。
こう評価されると家族名義の口座にある預金にも相続税がかかります。
有価証券について
次のような有価証券にも相続税がかかります。
- 上場株式
- 非上場株式
- NISA口座の株式
- 国債
- 地方債
- 社債
- 株式投資信託
- ETF
- J-REIT
上場株式など市場での取引価格がすぐにわかるものであれば取り扱いもそう難しくはありません。
一方で、非上場株式のように取引価格が明らかでないものもあります。
この場合は相続する者によって評価方法も変わってきますし、複雑な計算を要するため、税理士に相談して対処しましょう。
事業用財産について
被相続人が個人事業主であったときは事業用財産が残っていますので、以下の財産の調査も進めておきましょう。
- 事業用の預貯金口座
- 事業用の手許現金
- 売掛金
- 未収入金
- 棚卸資産(商品、製品、原材料など)
- 減価償却資産(工具、器具、備品、車両、機械装置など)
事業を営んでいたときは、これらプラスの価値を持つ財産のほか、買掛金や借入金などの債務が残っている可能性も高いため、ご注意ください。
家庭用財産について
次のような家庭用財産と呼ばれるものも要チェックです。
- 家具
- 家電
- 貴金属
- ブランド品
- 自家用車(バイクも)
- 絵画や坪などの芸術品
- ゴルフクラブやカメラ、楽器などの趣味の道具
幅広く、さまざまな財産が相続税の対象ですが、実務上は「5万円以下の家庭用財産」はまとめて概算で処理します。
税理士にチェックしてもらい、ざっと「家財一式で20万円」などと概算額で申告するのが一般的です。
なお、仏壇や仏具、墓地などの礼拝用の財産は原則非課税ですが、投資目的で所有していたものには課税されます。
相続税課税に関して注意すべき財産
純粋な遺産とは違いますが、いくつか相続税の計算上注意が必要な財産があります。これらをご紹介していきます。
みなし相続財産①生命保険金
本来の相続財産は亡くなった者が所有していた財産です。
生命保険金については、被相続人が亡くなった後に保険会社から支払われるものであって、被相続人が所有していた金銭ではありません。
しかし、保険料を被相続人が納めていたときは、被相続人の財産(相続財産)が形を変えて支給されたと考えることもでき、課税上は相続財産とみなされます。
このように「本来の相続財産ではないが相続財産とみなすもの」がいくつかあり、これらを「みなし相続財産」と呼んでいます。
生命保険金はその代表例で、相続人がこれを受け取ったときは相続財産と同じように課税対象となります。
※ただし、全額の課税ではなく「500万円×法定相続人の数」で算出される額までは非課税で受け取れる。
みなし相続財産②退職手当金
被相続人が勤めていた会社などから支給される「退職手当金(死亡退職金と呼んだりもする。)」にも相続税がかかります。
相続人がその支払いを受けたときは、相続税の計算にご注意ください。
※生命保険金と同様に「500万円×法定相続人の数」で算出される額までは非課税で受け取れます。
みなし相続財産③損害保険金等
交通事故により亡くなったときは、相手方からの「損害賠償金」または保険会社からの「損害保険金」を受け取ることがあります。
原則として加害者側から支払われる損害賠償金や保険金(自賠責保険による保険金、任意保険による対人賠償保険の保険金)は非課税です。
※被相続人に過失が認められるときは、その部分にのみ相続税がかかります。
しかし、被相続人が保険料を負担していた保険契約から受け取る死亡保険金や、搭乗者傷害保険金などは、一般的な生命保険金と同じように相続税がかかりますので注意してください。
相続開始前7年以内の贈与財産
贈与財産には本来、贈与税が課税されますが、相続開始前7年以内に被相続人から受け取った贈与財産に関しては相続財産に加算して相続税を申告します。
※2024年の贈与から「前7年」の期間が適用されます。2023年までの贈与に関しては「前3年」のものが相続財産に加算されていました。
亡くなった年に受けた贈与も、贈与税の基礎控除額以下の贈与も、例に漏れず相続財産に加算します。
相続時精算課税による贈与財産
贈与時点における税負担を軽減し、相続時にまとめて処理を行う「相続時精算課税制度」というものがあります。
この制度を利用して贈与をしていたときは、当然、その適用を受けた贈与財産を相続財産に加算しないといけません。
例えば、この「相続時精算課税制度」を活用して祖父から孫へ贈与が行われるケースがありますが、この孫が相続人でなくても相続税の課税を受けますので注意してください。
課税価格から控除できる債務
遺産のすべてに相続税がかかるわけではありません。被相続人が債務を残していたときは、遺産の総額から債務の分を差引くことが可能です。これを「債務控除」と呼びます。
《 控除できる債務 》
- 借金
- 未払の税金や社会保険料
- 未払の水道光熱費
- 未払のクレジットカード利用料
- 未払の後見人報酬
- 相続開始後に支払う医療費
ただし、次の債務・費用については債務控除ができません。
《 控除できない債務 》
- 団体信用生命保険に加入していたときの住宅ローンの残債
- 生前に購入してまだ支払っていない墓地や仏壇などの購入費用
- 相続手続に関して税理者や弁護士、司法書士などに支払った報酬
また、債務控除ができる人物は①相続人と②包括受遺者(遺言により一定割合の遺産を受け取る受遺者)に限定されていますので、ご注意ください。
課税価格から控除できる葬式費用等
葬式費用は被相続人が亡くなってから発生する費用ですが、相続税の計算上、上記の債務同様に差引くことが認められています。
ただし、次のように控除可能な費用とそうでない費用がありますので間違いのないようにしてください。
控除できる葬式費用 | 控除できない葬式費用 |
|---|---|
・通夜や葬儀、告別式の費用(その場での飲食費用、タクシー代なども含む) ・火葬や納骨の費用 ・読経料や戒名料、お布施 ・遺体の運搬費用 ・遺体の解剖費用 | ・参列者の旅費 ・初七日法要の費用 ・四十九日法要の費用 ・香典返しの費用 ・墓地や仏壇の購入費用 |
なお、債務控除のできる人物が①相続人と②包括受遺者に限定されているのは前項の債務同様ですが、「相続放棄をした方」においては葬式費用についてのみ差し引くことが可能です。
相続開始後の入出金について
被相続人が亡くなってから受け取る金銭、例えば「未収給与」「未収賞与」「未支給年金」などにご注意ください。
支給日が死亡後であるため遺族が受け取ることになった給与や賞与に関しては、所得税の対象から外れるとともに相続税の課税対象となります。
「高額療養費」「傷病手当金」についても、これらは亡くなった方がもらうべき金銭であるため相続税の対象です。
一方で、厚生年金や国民年金が死亡後に振り込まれたとき、受け取ったのが被相続人と生計を一にしていた遺族であったのなら、相続税の対象にはなりません。遺族の方自身の一時所得として処理します。
葬祭費や埋葬費に関しても葬儀を行った方に対し支払われる金銭ですので相続税の対象ではありません。
相続開始後の出金、例えば上述の「未払の税金」や「未払の社会保険」は債務控除の対象ですので、次の税金等について出金があったときは相続財産から差し引くことが可能です。
- 所得税
- 住民税
- 固定資産税
- 介護保険料
財産状況は人によって大きく異なるため、「これはどう扱えばいいのだろう」、「相続税の課税対象だろうか」と悩む財産が出てくることもあるかと思います。困ったときは無理にご自身で対応しようとせず、ぜひ税理士にご相談ください。
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PROFILE代表者の紹介

美藤 直人(びとう なおひと) / 公認会計士・税理士
大手監査法人での豊富な実務経験と、企業支援・相続・事業承継まで幅広い支援実績を持つ公認会計士・税理士です。
金融庁勤務や上場企業の社外役員など、多角的な視点で経営をサポートしています。
皆さまの『良き経営アドバイザー(軍師)』を目指して
ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
公認会計士・税理士の美藤直人(びとうなおひと)と申します。
私は1991年に公認会計士試験(旧第2次試験)に合格後、大手監査法人に勤務していましたが、2011年に税理士登録して当事務所を設立し、企業・個人事業者であるお客さまに対してご事業の発展をサポートするアドバイザー‘軍師’であり続けたいと考えて業務を行ってきました。
物価や金利の変動など経済環境が大きく変化する今、経営にはこれまで以上に柔軟な判断と確かな戦略が求められています。公認会計士・税理士として、経営者の皆さまの意思決定を支え、安心して事業を発展させていけるように全力でサポートすることが、私の真の仕事であると考えています。また、『史記』(中国前漢の武帝の時代の歴史書)に「計は会なり」という言葉が初めて表れたのが「会計」という言葉の始まりだと言われています。この「計は会なり」は「各方面の現場の真実を正しく報告すれば、ビジネスの価値が増大する」という意味であり、私が公認会計士・税理士として「会計」のお手伝いをすることが、お客さまのご事業の発展に通じることになります。
お客様の発展を自分の喜びとし、信頼される‘軍師’として法令に基づいた節税と経営サポートを行ってまいります。
今までの実務経験を活かしながら、「お客さまとともに成長する」ことを大切にし、起業支援、個人事業者の法人成り、創業融資、補助金の申請、税務申告(法人税、所得税、消費税、相続税など)、事業承継、事業再生、事業計画の作成支援、M&Aの買収調査まで幅広くお手伝いをしています。
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