相続時精算課税は小規模宅地等の特例と併用できるのか
相続税対策を考えるうえで、生前贈与や不動産の取り扱いは大きなポイントとなります。
生前贈与で利用できる「相続時精算課税制度」と相続時に適用できる「小規模宅地等の特例」は、負担を軽減する有効な手段として知られています。
本記事では、2つの制度の基本と、併用が可能かどうかについて解説いたします。
相続時精算課税制度とは?
相続時精算課税制度とは、生前に贈与された財産の贈与税を一時的に軽減し、相続時にまとめて精算する制度です。
通常、贈与税は贈与された時点で課税されますが、この制度を利用すれば、基礎控除額110万円と特別控除額2,500万円を合計した額までの贈与については非課税となり、それを超える部分も一律20%の税率で済みます。
ただし、相続が発生した際には、生前贈与された財産を相続財産に加算し、相続税を計算した後、相続税額から既に支払った贈与税額を引いた残額を相続税の納税額とします。
これにより、贈与時には税負担が抑えられるものの、最終的には相続税として納税することになります。
相続税精算課税制度を利用するケース
相続時精算課税制度は、主に次のようなケースで利用されます。
まず、不動産や自社株など価値が高く、今後も価格の上昇が見込まれる財産を早期に移転したい場合です。
将来の相続税対策として、評価額が低いうちに贈与することが有効になります。
また、子の住宅取得や事業資金として、まとまった資金を早めに援助したいときにも有効です。
60歳以上の父母又は祖父母から18歳以上の子又は孫への世代間の資産移転を計画的に行う目的でも用いられます。
ただし、相続時精算課税制度を一度選択すると、その後の贈与についても暦年課税に戻せないため、慎重に判断することが重要です。
小規模宅地等の特例とは?
小規模宅地等の特例とは、相続した土地のうち、一定の要件を満たすものについて、その評価額を最大80%まで減額できる制度です。
例えば、被相続人の自宅や事業用地を相続人が引き続き使用する場合、その土地の相続税評価額を大幅に軽減できるため、納税額が大きく抑えられます。
配偶者以外の相続人がこの制度を利用する場合、被相続人が住んでいた住宅地や事業を営んでいた土地の継続使用を前提としており、遺産分割や利用実態に応じて適用の可否が決まります。
なお、特例の適用には相続税の申告期限までの申請が必要です。
相続税精算課税制度と小規模宅地等の特例は併用できる?
相続税精算課税制度と小規模宅地等の特例は併用することができません。
したがって、小規模宅地等の特例を適用できる不動産は相続税精算課税制度を利用する贈与財産からは除いておく方が良いでしょう。
相続税精算課税制度と小規模宅地等の特例の計算例
どちらの制度を選ぶべきかは、相続人の状況や財産の種類によって異なります。
次のような例について、相続税精算課税制度と小規模宅地等の特例を利用した計算をみてみましょう。
- 父と子が同居している。
- 父の所有財産は宅地面積250㎡の自宅のみである。
- 不動産の贈与時の評価額は6,000万円(宅地5,000万円、家屋1,000万円)である。
- 不動産の死亡時の評価額は4,500万円(宅地3,700万円、家屋800万円)である。
- 父の推定相続人は子のみのため、相続税の基礎控除額は3,600万円である。
父から子へ生前贈与で相続税精算課税制度を利用する場合
相続税精算課税制度では2,500万円まで贈与税がかからないため、贈与税は次の式で算出されます。
■贈与税:(6,000万円-110万円-2,500万円) × 20% = 678万円
次に、父が死亡した際に贈与時の評価額をもとに相続税を計算します。
■相続税:(6,000万円-3,600万円) × 15% - 50万円 = 310万円
(税率と控除額は基礎控除額を控除した遺産の額が3,000万円以下のケース)
最後に、既に納めた贈与税を相続税から引きます。
■310万円 - 678万円 = △368万円
したがって、368万円の還付が受けられます。
この例では、生前贈与で相続時精算課税を利用すると、310万円の相続税がかかります。
父の死亡時に小規模宅地等の特例を適用して相続税を申告する場合
特定居住用宅地等として宅地の評価額を80%減額します。
■宅地の評価額:3,700万円 - (3,700万円 × 80%) = 740万円
■自宅の評価額:宅地の評価額+ 家屋の評価額 = 740万円 + 800万円 = 1,540万円
したがって、基礎控除額の3,600万円を下回るので相続税はかかりません。
まとめ
相続税精算課税制度と小規模宅地等の特例は、それぞれ異なる目的やメリットを持つ制度です。
どちらも利用する際には、要件や適用条件に注意が必要です。
相続でお困りの際は、ぜひ税理士にご相談ください。
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代表者の紹介

公認会計士
税 理 士美藤 直人
皆さまの『良き経営アドバイザー(軍師)』を目指して
ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
公認会計士・税理士の美藤直人(びとうなおひと)と申します。
私は1991年に公認会計士試験(旧第2次試験)に合格後、大手監査法人に勤務していましたが、2011年に税理士登録して当事務所を設立し、企業・個人事業者であるお客さまに対してご事業の発展をサポートするアドバイザー‘軍師’であり続けたいと考えて業務を行ってきました。

日本はバブル経済の崩壊後、厳しい経営環境にありますが、このような状況下において、経営者の皆様のご事業のサポートをするのが、私の真の仕事であると考えています。
また、『史記』(中国前漢の武帝の時代の歴史書)に「計は会なり」という言葉が初めて表れたのが「会計」という言葉の始まりだと言われています。この「計は会なり」は「各方面の現場の真実を正しく報告すれば、ビジネスの価値が増大する」という意味であり、私が公認会計士・税理士として「会計」のお手伝いをすることが、お客さまのご事業の発展に通じることになります。

したがって、お客さまのご事業が発展し、私も成長できたと認識できたときは、心の底から喜びを感じる次第です。
もちろん、企業・個人事業者及び個人の納税者であるお客様には、法令のルールに即した節税のアドバイスもさせていただきます。
今までの実務経験を活かしながら、「お客さまとともに成長する」ことを大切にし、起業支援、個人事業者の法人成り、創業融資、補助金の申請、税務申告(法人税、所得税、消費税、相続税など)、事業承継、事業再生、事業計画の作成支援、M&Aの買収調査まで幅広くお手伝いをしています。
お気軽にご相談ください。
経歴
-
- 1968年 8月
- 大阪府豊中市生まれ
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- 1987年 3月
- 大阪府立豊中高等学校 卒業
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- 1991年10月
- 公認会計士第2次試験に合格 会計士補登録
-
- 1992年 3月
- 同志社大学経済学部 卒業
-
- 1992年 4月
- 監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)に入社
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- 1995年 3月
- 公認会計士第3次試験に合格 公認会計士登録(登録番号12473)
-
- 1998年 2月
- Deloitte & Toucheアナーバー事務所(米国ミシガン州)に2ヵ月間の短期派遣
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- 1999年 1月
- 監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)のコンサルティング部門を兼務
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- 2001年 4月
- 監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)のベンチャーサポート部門を兼務
-
- 2005年10月
- 金融庁に一般職の任期付常勤職員として勤務
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- 2007年10月
- 監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)に復職
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- 2011年 9月
- 有限責任監査法人トーマツを退職
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- 2011年10月
- 美藤公認会計士事務所を開設
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- 2011年12月
- 税理士登録(登録番号120080)、美藤税理士事務所を開設
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- 2012年 7月
- 株式会社コンステックホールディングス社外取締役に就任(2019年7月まで)
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- 2013年 7月
- 中小企業経営力強化支援法(現在の「中小企業等経営強化法」)に基づく経営革新等支援機関に認定
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- 2013年12月
- 大阪府中小企業再生支援協議会(現 大阪府中小企業活性化協議会) 外部専門家に登録
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- 2015年 6月
- サンセイ株式会社(東証2部、現スタンダード)社外取締役に就任(現任)
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- 2018年 1月
- 監査法人ラットランド社員(パートナー)に就任(現任)
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- 2019年 7月
- 株式会社コンステックホールディングス非常勤監査役に就任(現任)
セミナー講師等の実績
- 近畿財務局主催:コロナ禍における企業支援の在り方・手法ゼミ(2021年10月、11月、2022年10月、11月)
- 日本弁理士会関西会、日本公認会計士協会近畿会、大阪弁護士会共催:大学生応援セミナー ~弁理士、公認会計士、弁護士による職業紹介~(2021年2月)
- 大阪信用保証協会主催:事業承継セミナー ~経営者から見た会計の重要性(企業会計 税務会計 管理会計)~(2017年10月)
- 一般社団法人大阪銀行協会主催:事業承継セミナー ~事業承継のためのM&A、従業員持株会及び種類株式の有効活用~(2017年9月)
- 大阪大学基礎工学研究科主催:科学者のための財務、法務、知財の基礎 ~実務家の視点から~(2016年7月)
- 関西大学社会連携部知財センター主催:弁護士・公認会計士・弁理士による実務家講座(2015年11月、2016年11月)
- 日本公認会計士協会近畿会、大阪府不動産鑑定士協会共催:企業評価と事業用不動産の鑑定評価(2015年7月)
- 日本公認会計士協会近畿会、大阪弁護士会、日本弁理士会近畿支部共催:公認会計士の業務及びベンチャー支援(2014年1月、9月)
- 一般事業会社の社内研修:消費税と適格請求書等保存方式~インボイス制度~(2023年7月)、経営戦略、中期経営計画、取締役の義務と責任、決算書の見方(2013年2月、2019年7月)、国際財務報告基準(IFRS)(2010年)
- 八日市商工会議所主催:若手経営者のための決算書の見方、財務分析及び資金調達(2012年10月)
- 大阪証券取引所主催:ヘラクレスクラブ勉強会 ~内部管理制度・内部監査~(2003年7月)
- その他:株式上場セミナー(2003年9月、2004年2月、2004年8月、2005年1月)、IPOの成功例と失敗例(2003年4月)、ビジネスプランの作り方(2001年9月、2002年2月)、ディスクロージャー実務者養成セミナー(2003年9月)、ビジネスプラン作成講座(2001年7月)など
事務所概要Office Overview
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