美藤公認会計士・税理士事務所 > 独立開業・会社設立支援 > 資本金を決める6つのポイント| 設立時に知っておきたいルールと金額による影響

資本金を決める6つのポイント| 設立時に知っておきたいルールと金額による影響

会社を設立するときは資本金の払い込みをしないといけません。払い込むべき金額については各起業者が好きに決めることができますが、よく考えて設定することが大事です。

 

なぜ資本金の額を定めるときに慎重になるべきなのか、どのような点に注目して定めると良いのか解説しておりますので、ぜひチェックしておいてください。

資本金に関する基本ルール

株式会社では、出資者である株主の責任は「有限責任」であると法定されています。これは出資した限度でのみ責任を負うということを意味しますので、少なくとも出資分は会社債権者のために置いておく必要があります。

 

この債権者保護の観点から、会社には資本の維持が求められ、自由に資本金の額を下げることはできなくなっています。また、株主に対する配当金に関しても、資本金等の額を超える純資産額がある場合に限ってこれを認めています。

 

ただ、会社設立時であれば自由に定めることができます。この時点ではまだ他社との取引が発生していませんし、少ない資本金の額としても悪影響がありません。かつては最低資本金制度が運用されていたのですが、その制度も撤廃されて今では資本金1円でも設立可能となっています。

金額を定めるときの6つのポイント

資本金の額は原則として自由に定めてかまいません。ただし、この金額が別の制度に影響することがありますし、取引の際に見られて評価に影響してくる可能性もあります。

 

そこで、資本金の額について検討をするときは、次の6つのポイントに着目してみましょう。

 

    • 起業者自身の経済力
    • 設立にかかる初期費用
    • 許認可の取得要件
    • 金融機関や取引先からの評価
    • 創業期における運転資金
    • 設立後の税の負担

 

各ポイントについて、資本金の額との兼ね合いでどのように考えるべきかを解説していきます。

①起業者自身の経済力

資本金の額として定めた金額を実際に払い込まないといけませんので、資金の準備が必要です。集め方に決まりはなく、多くの方の出資を募ることができれば1,000万円でも1億円でも用意できるかもしれません。

 

しかし、経営者の知名度が特段高いわけでもなく、資産家でもなければ、資本金となる資金を集めるのも難しいです。

 

代表的な資金調達方法として「金融機関からの融資」も挙げられますが、これにも限度があります。貸し手である金融機関側にもリスクがありますので、例えば、必要資金の半分近くを自己資金でカバーできているかなど、代表者の経済力が審査されます。多額の資金を借りるのならそれ相応の経済力を持っていること、多くの自己資金を準備することが求められるでしょう。

 

そこで、「必要資金の数割程度を自己資金で備えることができるか」という点に着目して資本金の額を考えていくことも大事です。

②設立にかかる手数料

資本金の大きさが会社設立費用にも影響します。

 

1つは「設立登記の際の登録免許税」です。

 

設立するのが合名会社や合資会社であれば6万円で固定ですが、株式会社や合同会社では「資本金の額×0.7%」を納めないといけません。

※株式会社では15万円が最低額、合同会社では6万円が最低額。

 

もう1つは「定款の認証手数料」です。

 

設立するのが株式会社だと、作成した定款について公証人の認証を受けないといけません。そして、このとき納めないといけない手数料は、資本金の額が「100万円未満なら3万円」、「100万円以上300万円未満なら4万円」、「その他の場合は5万円」と規定されているのです。

 

また、株式会社の設立において株式払込事務取扱手数料が発生することもあります。

 

発起人しか株式を引き受けないとき(これを「発起設立」という)は設立手続きも比較的シンプルなのですが、発起人以外の一般投資家による出資も求めるとき(これを「募集設立」という)は出資金の払い込みに関する事務に手間がかかります。
払い込み先となる金融機関に事務を委託し、払い込みの証明書を作成してもらう必要があり、その際に手数料が発生します。委託先により金額の設定は異なりますが、払い込まれる資本金の額に対応して手数料が大きくなる傾向にあります。

③許認可の取得要件

許認可を要する事業を始める場合は、その取得要件を事前にチェックしておいてください。資本金などの資産が一定額以上でなければ要件を満たさないケースがあります。

 

例えば、次に掲げる建設業や人材派遣業などでは要件に留意しながら資本金の額も決める必要があります。

 

建設業の要件

一般建設業:純資産500万円以上

特定建設業:資本金2,000万円以上かつ純資産が4,000万円以上

人材紹介業の要件

基準資産額500万円以上(1事業所当たり)

人材派遣業の要件

基準資産額2,000万円以上(1事業所当たり)

旅行業の要件

第一種旅行業:基準資産額3,000万円以上

第二種旅行業:基準資産額700万円以上

第三種旅行業:基準資産額300万円以上

地域限定旅行業:基準資産額100万円以上

④金融機関や取引先からの評価

資本金の額はその金額の出資を受けることができたという事実を示すに過ぎず、現にその額が社内に確保されている保証にはなりません。

 

それでも、一般に資本金の額は会社の規模や信用力などを把握する指標として見られています。資本金の額が大きいと「事業規模が大きい」、「リスクの大きな事業にも積極的に攻めていける」などと推測されることが多く、この点は売上高の大きさにも通ずる特徴があるといえます。

 

そこで、資本金の額を設定するときは、それが対外的な評価にかかわることを意識しておくと良いでしょう。同じ業界の会社、競合他社の額なども参考にすると良いかもしれません。

⑤創業期における運転資金

資本金として払い込んだ金銭は使うこともできます。むしろ創業時から短期間で安定的に売上を出すことは難しいため、ある程度の運転資金を用意しておき、これを使う必要があるでしょう。

 

3カ月程度の運転資金が目安とされますが、具体的な金額は事業計画を策定して決めることが大事です。収益の今後の見込み、資金繰りなど、さまざまな事情を考慮して資本金の額も考えていきましょう。

⑥設立後の税の負担

資本金の額は会社にかかる税の負担にも影響します。一定額以下なら優遇措置が受けられるものもありますので、節税効果も意識して資本金を考えると良いです。

 

資本金の額の影響を受ける税

法人税

・会社の所得の大きさに対応して法人税が発生する

・原則、税率は23.2%

・資本金が1億円以下なら、課税所得が800万円の部分には15%又は19%、800万円超の部分には23.2%の税率が適用される

法人住民税

・法人住民税は法人税の金額に対応する法人税割と、資本金の金額に対応する均等割から構成される

・均等割は資本金1,000万円以下なら7万円(従業員数50人超なら14万円)、1,000万円超~1億円以下なら18万円(従業員数50人超なら20万円)、・・・と増額されていく

消費税

・消費税は資本金の額が1,000万円に満たないなら免税事業者となることもできる

・ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円超になると課税事業者となり、また、適格請求書(インボイス)発行事業者となるためには課税事業者を選択する必要がある

資本金の額を変更することも可能

設立時にいったん定めた資本金を後から変えることも可能です。

 

ただし、「減資」をすると会社の財務体質が脆弱化する場合があり、その結果、債権者に悪影響を及ぼすおそれがあることから、原則として株主総会の特別決議で承認を受けないといけませんし、会社債権者が異議を述べることも認められます。

 

逆に「増資」をすることも可能です。

 

増資をすることで、会社の健全性を示す指標が改善する効果が得られ、事業規模拡大に向けて動きやすくなるなどの効果が期待できます。その一方で、株主の構成比率が変動して会社の運営に支障をきたす可能性もゼロではないため、注意してください。
また、税制上の優遇が受けられなくなることもありますので、税理士にも相談し、どのように増資に取り組むべきかを検討していきましょう。

よく検索されるキーワードMain Business

代表者の紹介

美藤直人税理士

公認会計士
税 理 士
美藤 直人

BITO Naohito

皆さまの『良き経営アドバイザー(軍師)』を目指して

ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
公認会計士・税理士の美藤直人(びとうなおひと)と申します。
私は1991年に公認会計士試験(旧第2次試験)に合格後、大手監査法人に勤務していましたが、2011年に税理士登録して当事務所を設立し、企業・個人事業者であるお客さまに対してご事業の発展をサポートするアドバイザー‘軍師’であり続けたいと考えて業務を行ってきました。

日本はバブル経済の崩壊後、厳しい経営環境にありますが、このような状況下において、経営者の皆様のご事業のサポートをするのが、私の真の仕事であると考えています。
また、『史記』(中国前漢の武帝の時代の歴史書)に「計は会なり」という言葉が初めて表れたのが「会計」という言葉の始まりだと言われています。この「計は会なり」は「各方面の現場の真実を正しく報告すれば、ビジネスの価値が増大する」という意味であり、私が公認会計士・税理士として「会計」のお手伝いをすることが、お客さまのご事業の発展に通じることになります。

したがって、お客さまのご事業が発展し、私も成長できたと認識できたときは、心の底から喜びを感じる次第です。 もちろん、企業・個人事業者及び個人の納税者であるお客様には、法令のルールに即した節税のアドバイスもさせていただきます。
今までの実務経験を活かしながら、「お客さまとともに成長する」ことを大切にし、起業支援、個人事業者の法人成り、創業融資、補助金の申請、税務申告(法人税、所得税、消費税、相続税など)、事業承継、事業再生、事業計画の作成支援、M&Aの買収調査まで幅広くお手伝いをしています。
お気軽にご相談ください。

経歴

  • 1968年 8月
    大阪府豊中市生まれ
  • 1987年 3月
    大阪府立豊中高等学校 卒業
  • 1991年10月
    公認会計士第2次試験に合格 会計士補登録
  • 1992年 3月
    同志社大学経済学部 卒業
  • 1992年 4月
    監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)に入社
  • 1995年 3月
    公認会計士第3次試験に合格 公認会計士登録(登録番号12473)
  • 1998年 2月
    Deloitte & Toucheアナーバー事務所(米国ミシガン州)に2ヵ月間の短期派遣
  • 1999年 1月
    監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)のコンサルティング部門を兼務
  • 2001年 4月
    監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)のベンチャーサポート部門を兼務
  • 2005年10月
    金融庁に一般職の任期付常勤職員として勤務
  • 2007年10月
    監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)に復職
  • 2011年 9月
    有限責任監査法人トーマツを退職
  • 2011年10月
    美藤公認会計士事務所を開設
  • 2011年12月
    税理士登録(登録番号120080)、美藤税理士事務所を開設
  • 2012年 7月
    株式会社コンステックホールディングス社外取締役に就任(2019年7月まで)
  • 2013年 7月
    中小企業経営力強化支援法(現在の「中小企業等経営強化法」)に基づく経営革新等支援機関に認定
  • 2013年12月
    大阪府中小企業再生支援協議会(現 大阪府中小企業活性化協議会) 外部専門家に登録
  • 2015年 6月
    サンセイ株式会社(東証2部、現スタンダード)社外取締役に就任(現任)
  • 2018年 1月
    監査法人ラットランド社員(パートナー)に就任(現任)
  • 2019年 7月
    株式会社コンステックホールディングス非常勤監査役に就任(現任)

セミナー講師等の実績

  • 近畿財務局主催:コロナ禍における企業支援の在り方・手法ゼミ(2021年10月、11月、2022年10月、11月)
  • 日本弁理士会関西会、日本公認会計士協会近畿会、大阪弁護士会共催:大学生応援セミナー ~弁理士、公認会計士、弁護士による職業紹介~(2021年2月)
  • 大阪信用保証協会主催:事業承継セミナー ~経営者から見た会計の重要性(企業会計 税務会計 管理会計)~(2017年10月)
  • 一般社団法人大阪銀行協会主催:事業承継セミナー ~事業承継のためのM&A、従業員持株会及び種類株式の有効活用~(2017年9月)
  • 大阪大学基礎工学研究科主催:科学者のための財務、法務、知財の基礎 ~実務家の視点から~(2016年7月)
  • 関西大学社会連携部知財センター主催:弁護士・公認会計士・弁理士による実務家講座(2015年11月、2016年11月)
  • 日本公認会計士協会近畿会、大阪府不動産鑑定士協会共催:企業評価と事業用不動産の鑑定評価(2015年7月)
  • 日本公認会計士協会近畿会、大阪弁護士会、日本弁理士会近畿支部共催:公認会計士の業務及びベンチャー支援(2014年1月、9月)
  • 一般事業会社の社内研修:消費税と適格請求書等保存方式~インボイス制度~(2023年7月)、経営戦略、中期経営計画、取締役の義務と責任、決算書の見方(2013年2月、2019年7月)、国際財務報告基準(IFRS)(2010年)
  • 八日市商工会議所主催:若手経営者のための決算書の見方、財務分析及び資金調達(2012年10月)
  • 大阪証券取引所主催:ヘラクレスクラブ勉強会 ~内部管理制度・内部監査~(2003年7月)
  • その他:株式上場セミナー(2003年9月、2004年2月、2004年8月、2005年1月)、IPOの成功例と失敗例(2003年4月)、ビジネスプランの作り方(2001年9月、2002年2月)、ディスクロージャー実務者養成セミナー(2003年9月)、ビジネスプラン作成講座(2001年7月)など

事務所概要Office Overview

名称 美藤公認会計士・税理士事務所
所在地 〒530-0041 大阪市北区天神橋2丁目北1番21号 八千代ビル東館3階B号室
大阪メトロ南森町駅・JR大阪天満宮駅の3番出口を出て天神橋筋商店街を北に120m
1つ目の小さな十字路を右折して40m先の右側のビル(1階に皮膚科と調剤薬局があります)
TEL TEL:06-4800-8410
代表者 美藤 直人(びとう なおひと)
対応時間 平日 9:00~18:00
定休日 土曜・日曜・祝日※事前にご連絡いただければ、休日も対応します。
内観写真
美藤公認会計士・税理士事務所の公式ブログはこちら